JERAの2025年度の利益が実質ベースで27.7%増――グローバル戦略が奏功
SDKI Analytics によって発行されました : May 2026
東京、2026年5月7日 — 日本最大の発電事業者が、ここ数年で最も激動したエネルギー市場の渦中に身を置きながらも、近年の歴史において最も強固な「実質的な収益力」を確立してその局面を乗り切りました。東京電力と中部電力による折半出資の合弁会社であり、日本全体の発電量の約3分の1を担うJERA(ジェラ)は、2026年3月31日に終了した会計年度において、前年比5.2%増となる1,935億円の純利益を計上しました。
さらに、営業利益は14.6%増の2,759億円に達したほか、燃料費の価格転嫁の遅れに伴う「タイムラグ効果」を除いた実質的な収益力は、前年比で27.7%もの大幅な伸びを示しました。
この数値が特筆に値するのは、その背景にある市場環境ゆえです。JERAが今まさに締めくくった会計年度は、ホルムズ海峡における情勢緊迫による初期の衝撃、逼迫した状況が続く世界のLNG(液化天然ガス)市場、そして卸売価格が低迷する国内電力市場といった、幾重もの逆風が吹き荒れる時期と重なっていました。こうした極めて厳しい環境下にあってもなおJERAが利益率を拡大できたという事実は、まさにこのような市場の激しい変動(ボラティリティ)に耐えうるよう、周到に設計された同社の調達・トレーディングモデルの有効性を如実に物語っています。
概要
- JERAの2025年度(2026年3月31日終了)純利益:1,935億円(約12.1億米ドル)
- JERAの純利益成長率:前年度比 +5.2%
- 2025年度の営業利益:2,759億円
- 実質利益(タイムラグ影響を除く)の成長率:前年度比 +27.7%
- 2025年度の売上高:3.05兆円
- JERAの年間LNG取扱量:約35百万トン
- JERAによる日本向けLNG輸送量のうち、ホルムズ海峡経由の割合:約5%
- JERA、2026年7月までのLNG在庫確保の見通しを確認
- QatarEnergyとJERAの間で、年間3百万トン・27年間の契約を締結;これは長期契約であり、2028年から引き渡しが開始される27年間の売買契約(SPA)となります。
JERAの業績を牽引した要因の分析
2025年度にかけて、JERAにとって二つの要因が追い風となりました。第一に、2022年のウクライナ情勢緊迫化に伴う価格高騰期と比較して、世界のLNG調達コストが大幅に緩和されたことです。そして第二に、海外事業ポートフォリオの収益性が着実に向上していることです。これらはいずれも、JERAが数年前に下した経営判断の成果と言えます。
調達面において、JERAは地理的に分散させた長期契約とスポット購入を巧みに組み合わせることで、多角的な調達ポートフォリオを構築してきました。この多角化戦略により、同社は市場環境の変化に合わせてコストを機動的に管理する柔軟性を獲得しました。また、価格変動局面においても、特定の供給ルートに過度に依存し、リスクが集中してしまう事態を回避することが可能となりました。その結果、日本の卸電力価格が前年度に比べて軟調に推移する中にあっても、国内火力発電事業における利益率の拡大を実現しました。
より大きな成長の物語を紡いでいるのが、海外・再生可能エネルギー事業セグメントです。JERAは2015年4月、TEPCO とChubu Electricの合弁会社として設立されました。当初は、日本におけるLNGの集中調達および火力発電事業を担う中核組織として構想されていました。しかし設立以来、同社は海外の電力プロジェクトや再生可能エネルギー分野へと事業領域を拡大し、現在では海外事業セグメントが収益の柱として確固たる地位を築くまでに成長しました。こうした事業拡大こそが、JERAのビジネスモデルを、自社では完全にはコントロールしきれない国内電力価格の変動に対して、より強靭なものへと変えているのです。
同社のトレーディング部門である「JERA Global Markets」もまた、補完的な役割を果たしています。LNGカーゴ(積荷)の交換、スポット市場からの調達、そして契約ポジションの機動的な調整を可能にするその能力こそが、固定的な調達契約に縛られがちな小規模な電力会社とJERAを隔てる、決定的な差別化要因となっています。
JERAはいかにしてホルムズ海峡の混乱に対処しているのか
JERAが日本向けに輸送するLNG(液化天然ガス)のうち、ホルムズ海峡を経由する荷はわずか5%程度にとどまっています。同海峡では、米国およびイスラエルによる対イラン軍事作戦の影響で、2月以降、輸送の混乱が続いています。こうしたリスクへの露出が限定的であることは、JERAが過去10年にわたり構築してきた調達先の多角化戦略の成果を如実に物語っており、同社が供給上の緊急事態を招くことなく、今回の混乱を吸収し得た理由でもあります。
4月27日、大滝雅人執行役員は記者団に対し、「現時点で、7月まで持ちこたえるのに十分な在庫を確保している」と述べるとともに、今後もJERA Global Marketsを通じて、柔軟な調達管理を継続していく方針を示しました。同社のトレーディング部門は、一般的な買い手にはない独自の選択肢をJERAにもたらしています。それは、特定の輸送ルートや供給元に縛られることなく、スポット市場の活用や世界各地の取引先とのスワップ契約を通じて、代替となるLNG貨物を調達できるという能力です。
長期的な供給見通しについても、同様に盤石な体制が整っています。2026年2月、JERAはQatarEnergy(カタールエナジー)との間で、年間3百万トンのLNGを27年間にわたり調達する契約を締結しました。このLNGは、カタールの「ノースフィールド・サウス(NFS)」拡張プロジェクトから供給される予定です。本契約は、長期的な供給の柱としてカタールを信頼していることの表れであり、JERAの広範な戦略の一環でもあります。その戦略とは、安定的かつ長期にわたる契約をポートフォリオの基盤としつつ、トレーディング部門を活用することで短期的な需給変動への柔軟な対応能力を確保するというものです。なお、本契約に基づくLNGの引き渡しは、2028年から開始される予定となっています。
JERAは、中東情勢の推移に合わせてQatarEnergyによる建設工程の進捗を注視していく姿勢を示していますが、同社としては、中東地域に関連するリスクへの露出は十分に管理可能な範囲内にあるとの認識を示しています。ホルムズ海峡への直接的な依存度が低いこと、機能的なトレーディング部門を擁していること、そして北米・オーストラリア・中東といった地域から長期的な供給関係を多角的に構築していることです。これら3つの要素が相乗効果を発揮することで、JERAは、同業他社の多くと比較しても、現在の難局を乗り切るためのより多くの「武器」を手にしていると言える可能性があります。
JERAの変動に強い調達モデル
2025年度の業績が実際に示しているのは、JERAの中核となるアーキテクチャ、すなわち多様な調達、グローバルな取引能力、そして拡大する海外発電事業が、市場が困難な状況に陥った時にこそ真価を発揮するということであります。同社は、世界的なLNG価格の調整局面、前年度の水準を下回って推移した国内電力市場、そして過去10年で地域最大級とも言えるエネルギー供給ショックの初期的な影響が重なったこの1年間において、利益率の拡大を実現しました。
これは決して偶然の産物ではありません。2015年にJERAが設立された際、その背景にあった論理の一つは「規模の経済」の追求でありました。これは、東京電力と中部電力の調達量を統合することで、LNG市場における交渉力を強化することを目的としたものであります。しかし、より本質的な論理は、ガス上流事業への参画やLNG調達から、発電、そして現在の海外事業の拡大に至るまで、エネルギーサプライチェーンの全領域にわたって事業を展開できる体制を構築することにありました。2025年度の業績は、まさにこの事業基盤が、極めて大きな収益を生み出していることを如実に物語っています。
日本のエネルギーサプライチェーンに関わる企業群にとって、この事実はJERA単体の財務諸表にとどまらない、より広範かつ重要な意味を持ちます。強固な財務基盤に加え、機動的なトレーディング能力と拡大する海外事業基盤を併せ持つJERAは、利益率が薄く柔軟性に欠ける従来の電力会社と比較して、日本全体のエネルギー供給の安定化に貢献する上で、より優位な立場にあると言えます。現在の市場の混乱に対し、在庫水準を適切に管理しつつ、トレーディング部門を通じて代替調達先を積極的に確保するというJERAの対応ぶりは、こうした事業基盤の構築に向けたこれまでの投資判断が、いかに正しかったかを証明するものであります。
SDKIによる市場分析:JERAの成長が隣接市場にもたらすシグナル
JERAの2025年度業績は、日本のエネルギーセクターや、より広範なアジア太平洋地域におけるエネルギー移行の動向を追う市場参加者に対し、いくつかの重要なシグナルを発しています。
JERAの「海外・再生可能エネルギー」セグメントの成長は、日本最大級のエネルギー企業による国際化の動きが加速していることを示唆しています。JERAはもはや単なる日本国内の発電事業者にとどまらず、グローバルなエネルギーポートフォリオの構築を進めており、その事業拡大は、日本を大きく超えた市場において、取引案件(ディールフロー)、インフラ需要、そして投資機会を生み出しています。東南アジアや欧州において、洋上風力、太陽光、および国際的なガスインフラ事業を展開する企業にとって、JERAは今後ますます、取引相手あるいは競合相手として存在感を増していくことになる可能性があります。
危機管理ツールとしての「JERA Global Markets」がその有効性を実証したことは、LNG取引およびターミナルインフラへの投資の妥当性をさらに裏付けるものです。JERAが代替貨物を調達し、トレーディング部門を通じて短期的な供給不足を管理できる能力は、アジアの電力会社が同様の能力を模倣しようとする中で、さらなる投資が見込まれるまさにその種の能力であります。同地域全体におけるLNGターミナル容量、浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)、およびカーゴ・スワップ(交換)契約に対する需要の拡大は、まさにJERAが現在直面し、その対応に当たっている「供給ショック」から直接的に生じているものなのであります。
日本の蓄電池エネルギー貯蔵市場もまた、JERAおよび日本の電力系統が向かおうとしている方向性の恩恵を受ける分野の一つであります。原子力発電所の再稼働によって、柔軟性に欠けるベースロード電源が供給網に加わり、さらに日本の太陽光発電設備容量も拡大を続ける中、電力系統の需給バランスを調整するための「蓄電」の必要性は、ますます高まっています。
要するに、JERAの業績は、変化への適応を着実に進める一企業、そして市場全体にとって、極めて前向きな指標であると言えます。同社の調達モデルはその堅牢性を実証し、海外事業は順調に成長を遂げ、そしてトレーディング・インフラは、緊迫した局面においてその真価を遺憾なく発揮したのであります。
SDKI Analyticsは、日本およびアジア太平洋地域におけるエネルギー・電力市場を対象としています。その対象範囲には、エネルギー貯蔵、LNGインフラ、そしてJERAの成長が新たな機会を創出している発電セクターなどが含まれます。
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